Story of Advanced Standard

「スタンダード」、その普遍的なものを、どのようにアップデートし、自分のものとして表現していくのか。ブランドと所縁のある方をはじめ、核となるフィロソフィーをお持ちの方々に、その方なりのスタンダードに対する考え方や見つけ方などをインタビュー形式で綴る「Story of Advanced Standard」。

第2回目は、Swell Vintageのオーナー&バイヤーの山本めぐみさんにお話をお伺いしました。

——前職はアパレルではなく、全く違う職種だったと伺っています。今のお仕事を始めるきっかけや経緯をお聞かせいただけますか?

堅めの企業に勤めていたのですが、子供が生まれてからは専業主婦をしていました。当時住んでいた江東区は保育園の待機児童が全国NO.1で預けることができなかったので、仕方なく仕事を辞めました。

ある日、私が書いていたブログにコメントをくれていた女性と実際に会うことになったんです。その女性とは子供が同じ年だったこともあり、すぐに仲良くなりました。「このまま専業主婦で終わりたくない!」「じゃあ、何がしたい?」「ずっとファッションの仕事がしたいと思ってたんだけど、今さら未経験でできることじゃないよね。」なんて話しをしていました。ある時、彼女が「やろうよ!」「何が欲しい?自分たちが欲しいと思うものはみんなも欲しいはずだよね!」と言い出して。「上質なレザーのシンプルなクラッチバッグが欲しい!」と盛り上がりました。浅草橋に革問屋があるらしい、との情報を仕入れ、熱が冷めないうちに出かけて行き、一緒にミシンも購入しました。業務用ミシンという存在も知らなかった素人だったので、電気屋さんで一番厚い生地が縫えるものを聞いて、購入しました。経験もなく、周りに相談できる人もいなかったので、全てが手探り状態ではありましたが、そこから私たちの物作りが始まりました。

手作りで1つ1つ作り上げたクラッチバッグが10個完成しました。少しシンプルすぎたので古いアメリカのワッペンをつけて、「さて、どこでどうやって売ろうか?」と。(笑)そこで、インスタグラムをやってみようということになりました。とはいえ、当初はインスタグラムで物を売っている人はあまりいなかったので、これも、また手探り状態。誰かしら見てくれるだろうと期待してはじめましたが、もちろん、フォロワーもなかなか増えず、売れるわけもありませんでした。

——そこからどのようにして今のよう人気が出たのでしょうか?

ビーズなどでアクセサリーを作って、無料のサイトで販売をしている人たちが周りにちらほらといたので、真似して売ってみようかと。主人の知り合いが広告関係で、BASEというサイトの存在を教えてくれました。当時ではなかなかシンプルでよかったので、そこで始めることに。

とある人気タレントさんのインスタグラムに、私たちが作っているクラッチバッグととても似たものが写っていたんです。それは私たちの作ったものではなかったので、「あれ?」と思っているうちに、どこでどうやって見つけたのか、そのタレントさんのファンの方々が私たちのところに飛んできて。一気に2000人くらいフォロワーが増えて、作っても作っても完売する、という状況になりました。もちろん自分たちで内職して作っているので、10個が限界……どんなに頑張っても追いつくはずもありません。これは偶然に起きたことでしたが、嬉しい悲鳴でした。そうこうしているうちに出来たばかりのBASEのサイトがパンク。そんなこともあり日経新聞からBASEの社長への取材依頼に、私たちも取り上げられたんです。

——そこから古着を扱うようになったのはなぜですか?

クラッチバッグだけだとインスタの見え方が寂しいと思ったので、バッグにつけるワッペンを買う時にTシャツやスウェットなども買い付けて販売しました。黄色や赤のアイテムを並べたら華やかになってくれるかなって。それも、瞬く間に完売し、もっともっとというお声をたくさんいただきました。古着は学生時代にハマった時期もあり、もともと大好きだったので、子育てをしながらできる範囲でセレクトして行きました。バッグより古着の方が売れるようになり、私の気分がバッグではなく古着になって。気づいたら古着屋になっていました。(笑)

——山本さんの軸、スタンダートとも言える古着との関係は学生時代からだったんですね。当時はどのような付き合いでしたか?好きなものは変わりましたか?

私が高校生の頃は、古着屋には高いものも安価なものも全てが一緒に並んでいました。これは、いまと違うところですよね。だから、古着屋に行くのは、宝探しをしているような感覚でした。あの頃は毎年のように流行が変わっていったので、一通りは経験して取り入れてきました。でも、その中でトラッドはブレずにいつも軸として自分の近くに寄り添っていますね。

私のスタンダードはアメリカントラッドの中でも特に紺ブレです。これは学生時代から今も変わらず、ずっと自分の中心にあります。ポップアップをする際にも、売れる売れないに関わらず、紺ブレがあるということが私の世界観を表現してくれる重要なキーになっていると思うのです。古着屋さんで紺のブレザーに金ボタンが付いているのをみると、「これ、根こそぎください!」って気分になる。(笑)紺ブレがあってのワンピースやブラウス、だと思っています。紺ブレがある、ということでその周りに置いてある他のアイテムたちの品格が上がるような気がしています。もちろん、トレンチコートやミリタリーアイテムも私のスタンダードなので、この辺りも常に手元に置いています。

——古着をセレクトするときのこだわりを教えてください。

“自分が欲しいと思うものを選ぶ“これを軸にしています。売れなかったとしても自分が着ればいい、と思えるものだけをセレクトしています。「私は好きじゃないけれど、これ、売れそう。」という観点で選んだこともあったのですが、やっぱり売れなかった。「お客様はこういうものが好きだろうな。」といったお客様目線ではなく、自分がスタンダードですね。自分の感覚を重視してセレクトしているので、気分が反映されて、少し前に買い付けたものを見ると、そのときの気分が分かります。そんな私の気分の変化も楽しんでいただけたらと思っています。

——最近はポップアップや、アパレルブランドとコラボレーションをしたり活躍の幅を広げていますよね。今後はどのような活動をして行きたいと思っていますか?

ポップアップをするようになって5月でちょうど1年になります。ショップを構えたいとは思いますが、今のライフスタイルでは叶わないこと。年に3回の家族旅行の時に買い付けをしています。本当はポップアップを毎月開催したいのですが、子育てをしながらの生活なので難しい。今は、できることを無理のないペースでしています。続けていくことが1番大切だと考えているから。

接客はもちろん経験もないし、得意ではないのですが、お客様と直接そのものの背景や着こなしなどのお話しができることがとても楽しい。これからもこのスタイルを続けていきたい。もちろん、アイテムの幅を広げていきたいと思っています。シルバーアクセサリーは型を増やしたいし、ハットも作りたい。でも、自分のペースで1つずつゆっくりと、ですね。

出産や子育てという女性のライフスタイルの変化に抗おうとするのではなく、その時々の状況や立場にあった流れと距離感を見つけ実践することで、ご自分のスタンダードと向き合い、進化させていく。肩肘を張らずに、「今」の自分の声を聞いて、その先の自分へとつなげていく。まずはできることから始めたら、できないことは何もない。そんなしなやかな山本さんのスタイルは、大きな目標もまずは目の前の一歩からという、大切なことを教えてくれます。

Swell Vintage
山本めぐみ/Megumi Yamamoto
2011年にオンラインショップ「Swell」をスタート。アメリカの古着を中心に自ら買い付け、オリジナルデザインのシルバージュエリーと共に販売している。最近ではオンラインショップを飛び出し、企業とのコラボやポップアップも精力的に行っている。
https://www.instagram.com/meg_swellvtg/

撮影協力:Anea café白金店(5.6枚目)
Interview & photo : Hisako Namekata