Story of Advanced Standard

H/standardの根幹とも言える「スタンダード」。その普遍的なものを、どう工夫してアップデートし、自分のものとして表現していくのか。ブランドと所縁のある方をはじめ、ご自分の核となる素敵なフィロソフィーをお持ちの方々に、その方なりのスタンダードに対する考え方や見つけ方などをインタビュー形式で綴る「Story of Advanced Standard」。

記念すべき第一回目の今回は、helder(エルデール)デザイナー武田さんとパターンナーで奥様の幸さんにお話しをお伺いしてきました。H/standardになくてはならない存在であるhelderの「進化するスタンダード」とは。

H/standard立ち上げに際して、「本物のスタンダードアイテムの魅力を伝えていくためにしっかりと真面目なモノづくりをしたい」というブランドの想いと熱烈なラブコールにお応えいただいてhelderとのコラボレーションが実現したと伺いました。

——H/standardは「進化する定番」、helderは「大人のための上質な普段着」と言うコンセプト物作りをされていますね。武田さんは「スタンダードが進化する」とはどういった解釈をされていらっしゃいますか?

武田:ベーシックやスタンダードはそのままの意味だと「不変」「変わらないもの」と言う意味ですが、定番だからと言っていつもと同じものということではなく、その年ごとに今年の定番」にアップデートさせていっています。そのシーズンの気分を盛り込んだ生地やシルエットに変えていくことが、「進化させていく」ということだと思っています。

その時の気分を盛り込むと言っても、奇をてらったり頑張りすぎたものではなく、モードすぎず普通すぎず。手持ちのアイテムや最先端のアイテムとのつなぎ目になるような、毎日でも着ることができるアイテムをデザインしています。

——お二人はものづくりにおいて、インスピレーションの源になるようなものはどんなものですか?

武田:映画や音楽ってよく皆さんおっしゃるのですが、気分1番なんです。コレクションのデザインを始める前に、好きなものやいいなと思ったものの写真や絵を集めます。それらをバッとまとめて俯瞰して見てみると、その時の自分の気分や興味があるものがわかり、自分を再発見できるんです。他の人から見たらいつも同じなのかもしれません。よく見たら同じ写真だったりすることもあります(笑)でも、そこからスタートしています。

武田(幸):そう、いつも同じ。(笑)でも、その年々によってこなしが変わるから、やっぱり違うデザインが上がってきます。

武田:ミリタリー、ワークを含めたトラディショナルが好きで、そこからイメージソースが出てきている感じです。そして、何よりそのもの自体にヒストリーが見え隠れするものが好きです。トレンチコートの肩章などの各部は機能が考えられていて、なるべくしてなったもの。昔から受け継がれているものには、こういう生い立ちのようなものがついてまわりますよね。作られている地方の背景なんかがにおったりすると、とても興味心をくすぐられます。

——幸さんは絶対的に変わらないパターンのラインが存在していますか?helderの服たちがモダンな感じを保ち続けているのには、何から影響を受けてアップデートしていらっしゃるのでしょうか?

武田(幸):私も気分です。(笑)そして、毎シーズンアップデートしています。言うこともかなり変わります。私だけで作ったらシーズン毎にもっとガラッと変わってしまうかもしれない。

パターンもベースがあって守らなきゃいけないことはすごくたくさんあると思うんですけれど、でもほぼ守ってない。(笑)会社員の時は守らなくてはいけないものがたくさんあったんです。規定があったり、寸法的にも守らなきゃいけなくてはいけない数字がたくさんあった。でも、それがなくなったらとても自由になって、なんでも好きなことができるから本当に自由にしています。

私自身はデザインをしないので、デザイナーが作りたいと思うものを作るのが仕事だと思っています。でも、デザイナーが作りたいものだけれど、デザイナーには見えない自分だけしかわからない部分に自分だけの時代感のようなものを込めてパターンを引いています。でも、あまり誰も気づいてくれない。(笑)

武田:それがやっぱりパターンの真髄ですよね。

——気づく人は気づいていますよね。明確には気付かないのに、着ている人が今年の気分を味わえるというのは実際にはベストですね。お互いの方向性や意見が違うことはありますか?

武田(幸):特にないですね。これはないよね!とは言わないですね。

武田:ほぼやりたいことを形にしてくれています。

武田(幸):形にできないとは言わないけれど、これは、今ないんじゃない?ということは稀にありますね。何回かありますね、そうすると自分でも考え悩んだりしたことがありました。

武田:僕はパターンができないので、パターンとしての指示は出せないんですよ。でも、「このデザインが作りたいけれど、ここには切り替え線は入れたくない」というような希望を100%叶えて欲しいというと、パターンとしてできないと言われることがあります。僕も悔しいから考えるんです。そうしたら「できた!」ということが1回ありましたね。

武田(幸):2回あったかな。私も目からウロコのようなことがありました。毎シーズンごとに変化していくので、当たり前のことだけではできないことってあると思うんです。絶対「できない。」とは言わないようにしているのですが、頑張っても答えが出なかった時に武田から答えが出てきたことがあったんです。

——武田さんの気分に幸さんの気分を足して行く感じですね。

武田(幸)はい。私は形にする、武田は形を考えるのでぶつかることはないですね。

——H/standardの今シーズンの顔とも言えるFatigue Pants(ファティーグパンツ)ですが、これはどのようにして生まれたアイテムなのでしょうか?こだわりのポイントなども教えてください。

武田:「helderのベイカーパンツをさらに進化させた新しいパンツを展開したい。」これがH/standardからのコラボレーション依頼でした。

ファーストシーズンから想いをお互いに共有しながら一緒にスタンダードなアイテムを作ってきたので、どんな進化を求めているのかすぐに分かりました。

カジュアルなのに女らしいお尻を実現させたくて後ろのポケットを最大限ギリギリまで大きくしました。ヒップの丸みを潰さず、でもウェストはしっかりとフィットするように。相反することなので割とすぐに限界線に当たってしまいましたが、とにかくできる限り女らしく、でも無理矢理作った女らしさではなく自然に見えるように考えました。

武田(幸):ベイカーパンツとは、もともと男性の作業着で動きやすいように始めから股が開いているパターンなんです。それを女性の身体に乗せた時に綺麗に見せると言うのは歪みがある。綺麗に作りすぎてもカジュアルに着こなせない。頑張った感じに見せず、綺麗だけれどもナチュラルに見えるように工夫をしました。

——最後の質問になりますが、ご自分の中にファッション以外の「進化するスタンダード」と呼べるものはありますか?

武田:一番難しい質問ですね。ファッション以外で思い浮かぶことと言えば音楽なのかな。最近世の中のムードもそうなんですけれど、とんがったものがかなり削ぎ落とされて、ゆるくて楽なものがいいなとなんとなく感じています。

先日の展示会のBGMにレゲトンやカリビアンミュージックを使いました。最近は前とはまたちょっと違うゆったりした音楽を聞くようになりました。

それから、「進化するスタンダード」かどうかは分からないのですが、僕は昔からマッキントッシュ(アップル)を使っています。ここ数年の変化はものすごいですよね、iPhoneの時代になってPCと当たり前に連動していて。使える範囲で使ってはいますが、まだまだ払った金額ほどは使いこなせていないというのが実感です。(笑)仕事のかなりの分量をその二つのアイテムに助けてもらっています。

そういう意味で長年使っているスタンダードではありますが、もの自体がものすごく進化してきているので、進化について行きたいスタンダードがその二つです。

好きなものは基本的には古いもの、歴史や生い立ちが見え隠れするようなものなので物自体はそんなに進化しないと思うんです。でも、自分の気持ちが時代にくっついて進化しているから物の見え方が変わるのかなと。ものは進化していない、でも使い方が進化していると思います。古着もそうなのですが、古着は何も進化してない。でも、コーディネートが進化していますよね。

武田さんはフランスに出張に行かれた際に、娘さんが成人される日に渡そうと毎年1つずつペンダントを買い続けていらしたそうです。ふらっと入ったお店で買ったものから、マーケットで見つけたヴィンテージのものまで。先日20歳のお誕生日を迎えられた娘さんに晴れてそのスペシャルなプレゼントを渡し、いろいろなことを思い出しながら一緒に一つ一つ開けていったそうです。同じものが2つあって19種類になってしまったそうなのですが、気分と直感で買ってきた20個のペンダントを見て、自分の好きなものにも伝え続けたいものにもブレがないことも再確認されたそうです。そんな素敵なエピソードをうかがって、武田さんご夫婦の変わらない軸のようなものが見えた気がしました。

好きなものは変わらない、大切なものはいつまでも大切にする。しかし自分が変化していくことでスタンダードが進化していく。

機能と美学のバランスの中にある武田さんご夫婦の気分。その小さな変化球、それが日常のクオリティを軽やかにグレードアップしてくれるのではないでしょうか。

ブランドサイト「MAKING STORY-本物のスタンダードを求めて」でもコラボレーションに到るまでの経緯や想いなどをディレクター土井と対談させていただいています。

helder
武田 信一郎 / Shinichiro Takeda
武田 幸 / Sachi Takeda
遊び心と機能が共存したデザイン、最高の着心地と美しいシルエットを兼ね備えた「大人のための上質な普段着」を展開。日本生産、さらに職人的な技術や知識がある工場で作られるアイテムたちは、そのデザインと相まって大量生産では出せない温かみのあるオーダーメイドのような雰囲気をまとっている。

Interview : Hisako Namekata

今回ご紹介したファティーグパンツはこちら